(日付不明の書き残したもの)

集合住宅の前には産地直送のトラックが駐まり、素早く八百屋ができあがる。入り日が欠けはじめて、鎖のようなかがやきを落とす。それを受けて、集う客の顔に影が波立つ。わたしはそれを横目に歩いた。すぐ隣には遊具がある。さび付いたブランコで、近所の高校に通う女の子が二人、スカートをふともものあいだにうもらせるように挟んで(しかしぴったりとつけるのではなく、なんだかひだを形作るような具合にして)こいでいる。二人とも目立つタイプの子ではなかろう。ちらと見て、ふとそう感じた。その思いを裏付けるような、落ち着いた笑い声が弧を描いて、わたしの左耳にすうっと吸い込まれた。聞こえた。彼女たちのからだは建物の影に溺れている、薄い苦しい時間が流れている。